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新型コロナウイルスで外出を控えているタイミングでこの本に出会いました。
アガサ・クリスティ 「春にして君を離れ」 早川書房

無題

(あらすじ)
地方弁護士の夫との間に1男2女に恵まれ、よき妻・よき母であると自負し満足している主人公ジョーン・スカダモアは、結婚してバグダッドにいる末娘の急病を見舞った帰りの一人旅の途上にある。

荒天が一帯を襲い、交通網は寸断される。列車の来るあてのないまま、砂漠のただなかにあるトルコ国境の駅の鉄道宿泊所(レストハウス)に、旅行者としてはただ一人幾日もとどまることを余儀なくされる。何もすることがなくなった彼女は、自分の来し方を回想する。やがて彼女は、自分の家族や人生についての自分の認識に疑念を抱き、今まで気づかなかった真実に気づく。


衝撃的な1冊でした。

アガサ・クリスティーといっても何も事件が起こりません。
主人公の心理描写だけです。
この物語が書かれたのは100年前で、時代を経ても人間の心理は変わらないことに驚きました。

緑の文字部分はネタバレを含みますので読み飛ばしていただいてもOKです。
列車を待つ長い時間主人公は過去を振り返り、不信に感じながらも聞き流した人の言葉や行動から哀しい真実がほどけていくのですが、すべてうまくいったと信じていた人間関係は、実は誰からも必要とされない人間だったことに気づきます。
それに気づきながらも結局変わることを選ばなかったことで、主人公は生涯孤独な道を選ぶことになります。
ひとつ疑問に思ったことは、一度気づいてしまったことを今後何もなかったように生活できるのだろうか。
ラストで夫のひと言が胸に刺さりました。



ぐいぐい引きつけられて一気に読んでしまいました。
読み終わってしばし茫然…
もう一度読みたいと思わせる本でした。
誰しもひとつくらい自分と重なる部分があるんじゃないかな?


少し話しは逸れますが,キャンサーギフトと言う言葉があります。
私は夫の罹患により、今まで支えられいかに幸せだったかということに気づきました。
それは、強烈な不幸がやってきた為幸せのハードルが下がったというわけではないんです。
日常のすべてが当たり前の出来事で、感謝という気持ちがなかったということです。
夫が癌という病気にかからなければ、生活のそこかしこに幸せが転がっていることに気づかなかった。

普通に仕事ができる幸せ。
ごはんがおいしい幸せ。
ぐっすり眠れる幸せ。
今日という日が平和に終わる幸せ。
明日がくる幸せ。
他にもいっぱいあります。


そして誰にも平等にそんな幸せに終わりが訪れるということ。
すべての人は致死率100%なのです。
わかっているつもりだったけど、命の期限をリアルに感じて意識が変わりました。

今はまだ経過観察中なのですが、取戻しかけている命を大切にするため自分のやるべきことをやるのみです。
この本を読んで、上っ面の自己満足にならないよう寄り添い続けることを肝に銘じました。

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